東京高等裁判所 昭和26年(ネ)2206号 判決
控訴代理人は、「原判決を取消す、被控訴人が別紙目録記載の土地につき、これを松本千代野に売渡す旨定めた売渡計画は、これを取消す、訴訟費用は差戻前の第一審、その控訴審、差戻後の第一審及び当審ともすべて被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上の陳述は、控訴代理人において、原判決事実摘示中柴崎博が昭和二十三年八月東京に転居したとあるのは昭和二十五年一月十日の誤りであると述べ、被控訴代理人において、原判決書三枚目裏三行目に「同年十一月」とあるのを「同年十一月二十一日」とし、なお、行政事件訴訟特例法第二条にいわゆる訴願の裁決というのは訴願期間内になされた訴願に対する裁決をさすもので、同法第九条により却下された訴願の却下の裁決を含まないから、出訴期間の起算日は少くとも異議申立の却下の日すなわち昭和二十四年十一月二十七日に置かれるべきであるから、この点で本訴は出訴期間を経過していると述べた外、原判決に事実として記載されたところと同一であるからここにこれを引用する。(立証省略)
三、理 由
控訴人が本訴において主張するところは、別紙目録記載の土地はもと訴外柴崎博の所有であつて、被控訴人は自作農創設特別措置法(以下自創法という)によりこれを買収し、訴外松本千代野にこれを売渡すべき旨の買収計画及び売渡計画を定めたが、右売渡計画には後に指摘するような瑕疵があつて違法であるから、ここにその取消又は無効確認を求めるというのである。被控訴人はこれに対し、本案前の主張として、控訴人の本訴中売渡計画の取消を求める部分は訴が不適法であると主張するから以下順次これを検討する。
被控訴人はまず、控訴人は本件農地につき売渡計画を定めた当時自創法第十七条による買受の申込をしていないから、同法第十九条の規定による不服申立ができないものであり、従つて本訴においても右売渡計画の取消を求める適格がないと主張する。被控訴人が買収計画及び売渡計画を定めた日時については当事者間に争があり、控訴人は昭和二十四年三月十八日と主張し、被控訴人は同年十一月十日と主張するもので、そのいずれであるかは後に認定するとおりであるが、成立に争のない甲第一号証の記載によれば、控訴人が本件農地(公簿上の地目は宅地であるが実質は農地であること当事者間に争がない)につき買受の申込をしたのは、昭和二十五年一月三十日であることが明らかであつて、売渡計画の定められた後であることは自明であるから、控訴人は同法第十九条による異議申立及び訴願の資格のないことは被控訴人所論のとおりである。しかしながら、他人に対する行政処分であつても、これが取消を求めるについて法律上の利益を有するものは、憲法第三十二条及び行政事件訴訟特例法の定めるところによつて、訴訟を提起し得るものと解すべきであるから、これが取消について自創法上異議の申立及び訴願の適格がないからといつて、直ちに訴訟を提起し得る適格を欠くものということはできない。控訴人は自己が本件農地の売渡を受け得る適格者であることを主張し、右松本千代野に対する売渡計画の取消を求めているものと解すべきであるから、これについて正当の利益を有するものと認めるべきものであつて、この点については控訴人の適格を否定すべき理由はない。
次に被控訴人は、本件土地の売渡計画に対して控訴人のした異議の申立は当事者適格を欠くものとして却下され、その却下決定に対してした控訴人の訴願も同一理由で却下となり、いずれも内容の審査を受けていないから、行政事件訴訟特例法第二条にいう訴願の裁決を経たものということはできないし、また自ら異議申立及び訴願をしているところから見て同法第二条但書の事由もないものであつて、この点で控訴人の本訴は不適法であると主張する。しかしながら、右行政事件訴訟特例法第二条は、法令の規定によつて行政上の不服申立を許された事件についての規定であるが、本件においては右認定のとおり、控訴人には自創法上異議申立及び訴願の資格がないのであるから、控訴人としては直ちに訴訟を提起し得べきものであつて、右行政事件訴訟特例法第二条による制限に服すべき場合ではなく、これによつて直ちに控訴人の訴を不適法とすべき筋合ではない。
さらに被控訴人は、右のように訴願が不適法として却下された場合には、出訴期間の起算日は訴願裁決の日におくことはできないと主張する。なるほど本件において控訴人は自創法上売渡計画に対して不服申立の資格がないものであるから、同法による不服申立の方法を経ることなく直ちに裁判所に訴を提起し得たものである。従つて直ちに行政処分取消の訴を提起した場合には、その出訴期間の起算日が原処分のあつたことを知つた日又は処分の日におかれるべきことはもちろんである。しかしながら、一般にある行政処分に対して一定の資格ある者に訴願(その他の不服申立を含む、以下同じ)が許されている場合、その行政処分に不服ある者が、誤つて自己の場合も適法に訴願が許されるものと信じて訴願をした場合は、訴願裁決庁としてはその者に訴願の資格のないことの故にこれを却下する外はないわけであるが、その却下の裁決のあるまでは、その者は自己の場合が訴願に適せず従つて直ちに訴を提起し得る場合であることを知らないのであるから、もつぱら訴願の裁決に期待し、その結果を待つのを通常とするのであつて、裁決庁が本来の出訴期間内に直ちにこれを却下すれば格別、そうでない限り、その間に出訴期間を徒過することのあるべきは免れ難いところである。このような場合にも、それが本来訴願を経るを要しない場合であることの故に、前記の出訴期間の進行があるものと解する外はないとすれば、その当初自己の誤解に出たものとはいえ、裁決庁の裁決の時期の如何によつては、個人の権利救済の途をふさぐことになるわけであつて、とうてい正当のものということはできない。行政事件訴訟特例法第五条第四項は、出訴権を有する者が訴願の裁決を経ることにより、その出訴期間を徒過した場合を救済するために設けられた規定であるから、それは単に適法な訴願に対して裁決のあつた場合についてだけでなく、右のように本来訴願の資格のない者が誤つて訴願をした場合についても、いやしくも訴願裁決を経た以上、これに対してもその救済が与えられるべきものと解するのを相当とする。本件において、控訴人は被控訴人の売渡計画に対し異議申立をし、その却下決定に対しさらに昭和二十四年十一月三十日栃木県農地委員会に訴願をしたのであることは記録上明らかであるから、同委員会にして直ちに却下の裁決をしたとすれば、控訴人は十分本来の出訴期間内(売渡計画の日時は被控訴人の主張によれば昭和二十四年十一月十日であつて、後記認定のとおりこれが正しい)に訴を提起し得たわけであるのに、同委員会のした却下の裁決は昭和二十五年二月二十八日附で、その裁決書の謄本が控訴人に交付されたのは同年三月十二日であることは記録上これをうかがい得るところである。従つて本件の出訴期間は、前説示のとおり、控訴人において裁決のあつたことを知つたものと認めるべき右昭和二十五年三月十二日から起算すべきもので、同年三月三十一日に提起された本訴が適法であることは明らかである。
しからば控訴人の本件売渡計画の取消を求める訴が不適法であるとする被控訴人の主張はすべてその理由がない、よつて進んで本案について審理する。
別紙目録記載の土地(公簿上の地目は宅地であるが実質は農地)がもと訴外柴崎博の所有であつて、同人はこれを昭和九年から昭和二十一年まで訴外松本千代野に賃貸して小作させていたが、昭和二十一年十一月二十七日宇都宮地方裁判所で右柴崎、松本間に小作調停が成立し、昭和二十二年七月二十一日右柴崎はこれを松本から返還を受け、それ以来自ら耕作して来たところ、同人は昭和二十三年八月東京に転居したということで不在地主の認定を受け、栃木県那須郡黒羽町農地委員会において、自創法によりこれを買収し、右松本千代野にこれを売渡すべき旨の買収計画及び売渡計画を定めたことは当事者間に争がなく、右黒羽町農地委員会のした処分は、農業委員会法の施行に伴う関係法令の整理に関する法律(昭和二十六年法律第八九号)にもとずいて、被控訴人のした行為とみなされるところである(以下右委員会をも被控訴人ということとする)。被控訴人が右買収計画及び売渡計画を定めた日時については、前記のとおり当事者間に争があるが、成立に争のない乙第一、第二号証同第四、第五号証の各記載に差戻前の第一審における証人田野大安の証言をあわせ考えると、控訴人主張の昭和二十四年三月十八日には、まだ単に本件土地を含む一団の土地について買収及び売渡の計画案を立てたに過ぎず、同日開催の農地委員会の議事もこれを決定するにいたらず、右土地の中に農地でない部分があつてその分筆手続や、売渡の相手方の選定等に手間取り、その間委員長の更替などがあつて、結局正式に買収計画を定めたのは、被控訴人の主張する昭和二十四年十一月十日であることが明らかである。なお、控訴人は当審において右柴崎博が東京に転居したのは昭和二十三年八月頃ではなく、昭和二十五年一月十日であると主張するが、これによつて右買収計画の当時同人は不在地主ではなかつたとして右買収計画の違法を主張し、これを理由としてさらに売渡計画の違法を主張するものとすれば、右買収計画は確定判決(当審昭和二十六年(ネ)第一二七号農地売渡計画取消並訴願裁決取消請求控訴事件、本件差戻判決と共になされたもの)によつて争うべからざるものとなつているところであるから主張自体失当であるばかりでなく、成立に争のない甲第八号証の記載によれば、右柴崎は昭和二十三年七月二十四日にその居町黒羽町から転出し、同年八月二十三日再び同町に転入した上、さらに昭和二十五年一月十日に他に転出したもののように見えるけれども、成立に争のない乙第七号証の記載並びに差戻前の第一審における証人柴崎博の証言及び同じく控訴人本人訊問の結果によれば、右柴崎が家人とともに東京に転居したのは昭和二十三年七八月頃であつて、同年八月二十三日右本人だけ黒羽町に再び転入の手続をしたが、実際に居住しないため主食等の配給を受けていないことが明らかであつて、この点においても控訴人の主張は事実に反するものである。
控訴人は右売渡計画は違法であると主張するから順次これを検討する。
(一) 控訴人は、控訴人においては右柴崎から右土地の耕作権の譲渡を受け、被控訴人に対しその承認を申請したが、被控訴人はこの申請を握りつぶして売渡計画を定めたと主張するところ、成立に争のない甲第五号証の記載、前記証人田野大安の証言、差戻前の第一審及び当審における控訴人本人訊問の結果(但し後記信用しない部分は除く)に本件口頭弁論の全趣旨をあわせ考えると、控訴人は昭和二十四年四月頃柴崎博から本件土地の耕作権の移転を受け、同年五月十二日被控訴人に対しその承認を申請したところ、被控訴人はその頃すでに右土地について買収計画案を立てていたので、直ちにこれを承認しなかつたものであることが認められるから(右認定に反する当審における控訴人本人訊問の結果は信用しない)これをもつて売渡計画が違法であるとするのは相当でない。
(二) 控訴人は、右土地の売渡計画に先立つ買収処分については栃木県知事から所有者柴崎博に対しまだ買収令書の交付がなく、買収手続は終つていないのに、被控訴人は売渡計画を定めたもので違法であると主張するところ、右売渡計画を定めたのは買収計画を定めたのと同日であることは前認定のとおりであるから、売渡計画の当時は買収処分の手続を終つていなかつたことは、控訴人主張のとおりであるけれども、成立に争のない乙第一号証同第十三号証の各記載に本件口頭弁論の全趣旨をあわせ考えると、右買収計画に対してはその後栃木県農地委員会の承認があり、県知事の買収令書は昭和二十六年九月三日頃所有者柴崎博に交付されたものと認定すべきであるから、今日においては右買収処分の未了の故をもつて売渡計画の違法を主張し得べきものではないと解すべきである。
(三) 控訴人は、被控訴人は控訴人から本件土地について買受申請があり、これを受理しながら、県農地委員会の調査の際これを秘して控訴人の権利行使を阻害したと主張するが、成立に争のない乙第六号証の記載によれば、県農地委員会の本件土地に関する調査は昭和二十五年一月十九日であることが認められるのに、控訴人の本件土地買受の申込は同年同月三十日であること前認定のとおりであるから、この点に関する控訴人の主張は理由がない。
(四) さらに控訴人は、松本千代野は前示のように耕作権を適法に放棄したものであつて、同人は本件土地につきいわゆる遡及買収の請求をした者ではなく、また書面による買受の申込もしていないのに、同人に売渡すことと定めた本件売渡計画は違法であると主張するのに対し、被控訴人は、係争農地については控訴人から耕作権譲渡許可申請があり、また柴崎から買収計画案に対する事実上の異議もあつたので、被控訴人はこれらを一括して検討し、自創法施行令第十八条により売渡の相手方を選定し、本件土地を含めた一団のもと柴崎所有の土地につきその一部を控訴人に、本件土地の部分を松本千代野に売渡す計画を定めたものであつて、本件農地に関する縁故関係、将来農業経営を承継するものの有無、宅地住居からの距離、耕作の便否等を勘案し、右のように決したのであつてその間なんらの違法もないと主張する。よつて按ずるに、本件土地については、前記買収当時においては、松本千代野はすでに小作調停によつて適法に耕作権を失い、控訴人の耕作権取得については法定の承認が得られなかつたこと前示のとおりであるから、適法に耕作の業務を営む小作農は存在せず、また売渡計画の当時においても全く同様で、その他特段の事情の見るべきものがないから、自創法上いわゆる第一順位及び第二順位の売渡の相手方とも存在しない場合であつて、被控訴人が自創法施行令第十八条第二号に基いて第三順位の売渡の相手方を選定するのは相当である。しかして成立に争のない乙第四号証同第七ないし第十一号証の各記載に差戻前の第一審における証人松本千代野及び前顕証人田野大安の各証言、前示控訴人本人各訊問の結果をあわせ考えると、被控訴人が松本千代野をもつて自作農として農業に精進する見込ある者と認めたのは相当であつて、この点につき控訴人の方が松本よりもさらにその資格があるものと解すべき特段の事情は発見できない。しかして右松本が被控訴人に対して書面による買受の申込をしたことは右証人松本の証言によつてこれを認めることができる。しからば被控訴人が本件土地を松本に売渡すべき旨定めたのは相当である。
(五) 控訴人は最後に、被控訴人は本件売渡計画について県農地委員会の承認申請をするにあたつて、松本千代野が耕作権を失い、控訴人が柴崎から耕作権の移転を受けた旨を記載せず、虚偽の申請に対して承認がなされたものであるから売渡計画は違法であると主張する。成立に争のない乙第五号証(農地売渡計画承認申請書)の記載によれば、農地売渡計画についての承認申請書に控訴人主張の事項の記載がないことは明らかであるが、このような事項の記載はなんら法の要求するところでないのみでなく、右(四)認定のような本件においてこれを記載しなかつたことが虚偽であるとすべき理由はない。もつとも右承認申請は売渡計画の縦覧期間を終る以前に提出され、従つて後に資格のない者からではあつたが異議申立及び訴願がなされたのに、それに対する決定及び裁決がすまない間に提出されたことになることが明らかであるけれども、この点は控訴人が特に主張するところでなく、またこれによつて売渡計画そのものと解すべき理由はない。
しからば控訴人が本件農地売渡計画の違法を主張するところはいずれも失当であつて、またこれが当然に無効であることはとうてい認め難いところであるから、控訴人の本件農地売渡計画の取消又は無効確認を求める本訴請求はすべて理由のないものとして棄却すべきものであり、これと同旨の原判決は相当であるから、控訴人の本件控訴は失当として棄却することとし、訴訟費用及び参加費用につき民事訴訟法第九十五条第八十九条第九十四条を適用し、主文のとおり判決する。
(裁判官 藤江忠二郎 薄根正男 浅沼武)
(目録省略)
原審判決の主文および事実
一、主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は第一審控訴審並に当審共総べて原告の負担とする。
二、事 実
原告訴訟代理人は被告は別紙目録記載の土地を松本千代野に売渡す旨の売渡計画は之を取消す。訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求め、請求原因として別紙目録記載の土地は元訴外柴崎博の所有地で、同人は昭和九年から同二十一年迄訴外松本千代野に小作させていたが、昭和二十一年十一月二十七日宇都宮地方裁判所に於て同人との間に小作調停が成立し同二十二年七月二十一日その返地を受けその後右土地は柴崎に於て耕作して来たところ同人は同二十三年八月東京に転居したため不在地主の認定を受け、被告は昭和二十四年三月十八日右土地の買収並に売渡計画を立て栃木県農地委員会の承認を受け右土地を松本千代野に売渡す旨決定した。然し右処分には(一)原告は柴崎よりの耕作権の譲渡を受けているのでその承認を申請したが被告はこの申請を握り潰し(二)右土地の買収処分についての令書の発行がなく処分が完了していないのに売渡計画を立てゝいる。(三)原告が右土地の買受申請をなしたのに被告は之を受理しながら県農地委員会の調査の際これを秘して原告の権利行使を阻害した。(四)松本千代野は前示のように耕作権を適法に放棄し、遡及買収の請求をしたものでないし書面による買受の申込をしていない(五)被告は売渡計画につき県農地委員会の承認申請を提出したが、松本千代野が耕作権を失い原告が柴崎より耕作権の譲渡を受けたことの記載がなく虚偽の申請により承認がなされたものであるから無効である。要するに被告は自作農創設特別措置法及同施行令の解釈を誤つたもので、右売渡計画は違法であるよつてその取消又は無効確認を求めるため本訴請求に及んだと陳べた。(立証省略)
被告指定代理人は本案前の主張として訴却下の判決を求めその事由として原告は自作農創設特別措置法第十七条による買受の申込をしていないから同法第十九条の規定による不服の申立ができない。従て当事者適格を欠く又本件土地の売渡計画に対し原告のなした異議は当事者適格を欠くものとして却下されそれに対してなした訴願も亦同一理由により却下となつた従て右訴願については内容の審査を受けていないこととなり訴願の裁決を経たものということができないから、行政事件訴訟特例法第二条に規定する訴の要件を具備していない。又自ら異議申立訴願をしているところから見て、同法第二条但書の事由もないこの点に於ても原告の本訴は不適法である。更に本件土地の売渡計画については昭和二十四年十一月十一日附の原告の異議申立に対し同月二十七日異議却下の決定をなしたのであるから、原告は右異議申立当時には売渡計画のあつたことを知つていた筈である。従て右売渡計画の取消を求める訴は遅くとも同年十一月より一ケ月以内に提出しなければならない。即ち前述のような理由により訴願についても却下の裁判がなされている以上出訴期間の起算日を訴願裁決の日におくわけには行かない。この点から言つても本訴は出訴期間を経過していると陳べ本案につき原告の請求を棄却するとの判決を求め答弁として原告主張のように被告委員会が買収並に売渡計画を立てたこと、本件土地は訴外柴崎博が松本千代野に対し、昭和二十一年十一月迄小作させていたこと同年十一月二十七日宇都宮地方裁判所に於て小作調停が成立し、同二十二年七月二十一日松本千代野は右土地を柴崎に返還したこと柴崎が転居したので、被告は不在地主として本件土地を買収したものであること、買収令書は発送したが到達のないことは認めるが、その他は否認する本件土地の買収計画は被告委員会に於て買収期日を昭和二十五年十二日二日と定め同二十四年十一月十日に買収並売渡計画を立てたものであるが、原告の買受申込書は昭和二十五年一月三十日附で提出されており、県農地委員会の調査は同年一月二十九日であるから被告が故意に申込書を秘すことはできない。本件係争農地については原告より耕作権譲渡許可申請があり、柴崎からの買収計画に対する異議と共に被告は一括検討し一応自作農創設特別措置法施行令第十八条により売渡を決する農地に該当するので同条に従い、売渡の相手方を選定しその一部を原告に一部を松本千代野に売渡すことを決定したものである。即ち本件農地に対する縁故関係、将来農業経営を承継する者の有無、宅地住居よりの距離、耕作の便否等を勘案し前示のように売渡の相手方を決定したのであつて、その間に何等の違法はないと陳べた。(立証省略)